Q.
高校2年の娘と中学3年の息子がいます。
夫は会社を経営していて、最近事業継承のことも考え始めたようです。
そのせいか、夫の子どもへの対応が、娘と息子で違うんです。
もともと娘には甘い父親でしたけど「よくあること」くらいに思っていました。
ところが1年ほど前から極端になり、娘の言うことには言いなりなのに、息子には自分の考えを押しつけるんです。
同じように対応してと何度も頼んだんですけど「社会的役割が違う」の一点張りです。
息子に仕事を継がせようとしているみたいなんですが、子どもに継がせるにしても娘だってありだし、だいたい子どもに親の仕事を押しつけるなんてどうかと思います。
子どもたちがかわいそうで、2人を連れて家を出ようかと思うこともあります。
A.
2025年5月30日付け朝日新聞に「心の健康 若い女性で深刻化傾向」の大きな見出しの記事が載りました。
「男女間格差 中学から拡大」とサブタイトルが付けられています。
若い世代の心の健康(メンタルヘルス)が年々悪化を続け、危機的状態にあることが世界的に懸念されていて、とりわけ深刻と言われるのが女性だということです。
うつ病や不安症という精神疾患の発症は世界的に15歳ごろピークを迎え、米国では「持続的な悲しみや絶望感」を経験した高校生が、男子生徒の28%、女子生徒は53%(2023年)に上っています。
2009年には、男子生徒19・1%、女子生徒33・9%だった(ランセット精神医学誌)のに、この14年間で大きく増えているのです。
若者のメンタルヘルスが悪化した理由に、男女共に「若者の雇用の不安定化」「経済格差」の他、「温暖化に伴う気候不安」などを挙げています。
問題なのは、女子生徒の「持続的な悲しみや絶望感」の体験が男子生徒の2倍にもなっているということです。
この格差は女子は中学のころから「女性らしい振る舞い」や「外見」が重視されやすく、そういったルッキズムに傷つき、強いストレスを受けたり、将来の職業や恋愛結婚についても親や社会からステレオタイプの女性像を押しつけられているからに他なりません。
日本のジェンダーギャップ指数(世界経済フォーラムが毎年発表している男女格差を数値化したもの)は、2024年も低迷が続き146カ国中118位で男女格差が顕著です。あなたの夫の考え方が少女たちの心の健康を悪化させているというわけです。
社会では、職業選択に男女格差はないというのが建前で、家業を継がせるのは男の子でも女の子でもかまわないはずなのに、実際には男女の違いが重視され、女性の夢や希望を壊してしまっています。
男女平等の流れの中にも、それを押し戻そうとする大きな力が存在していて、子育てにおける「男の子は男の子らしく」「女の子は女の子らしく」という考え方が未だ残っており、しばしば政治にも利用されています。
親としては、そういったものに惑わされることなく、子ども一人一人の個性や能力を丁寧に見て、自分とは違った一人の人格として尊重して上げることが大切です。
厳しい言い方になりますが、子どもを連れて家を出る覚悟で夫と話す必要がありそうですね。