Q.
会社の6人と飲みに行った時、いつも親切に面倒を見てくれている1年先輩の彼に私から声をかけて付き合い始めました。平日のデートは近場で飲んだり、食事をしたりですけど、彼が運転好きなので休日はドライブ中心で海や山、温泉とかに出かけます。優しい人なんですけど、ハンドルを握ると人が変わるんです。付き合い始めたころは、運転中も私を意識してか普段通りの彼だったのに、半年を過ぎたころから、危険な歩行者や自転車とかのろのろ走っている車とか、汚い言葉で罵ります。時には、私がびっくりするくらいの大声で怒鳴るんです。運転以外でそんな彼を見ることはないので戸惑います。基本的には優しい人と思っているんですけど、結婚のことを考えると少し不安です。
A.
普段は優しいいい人なのに、なぜかハンドルを握ると人が変わる恋人。いますよね、こういう人。結婚を考えると不安になるとのご相談ですが、不安になるのは当然です。彼は今のところ汚い言葉で罵ったり大声で怒鳴るという行為にとどまっていますが、この延長線上にあるのが猛スピードでの運転やあおり運転などの危険な運転です。こうした危険な運転をするドライバーや運転そのものを「ロードレージ」(運転中の過激な報復行動)と呼びます。なぜこうしたロードレージが生まれるかというと「ストレスの基準が一定以上」になると無意識に自己防衛をしようという本能が働き、車の中という「プライベート空間」で、ストレスのはけ口として暴言を吐いたり、猛スピードでの運転やあおり運転をしてしまうのです。
付き合って半年が経ち、あなたとの関係が近くなり、あまり気を遣わずにすむ関係になったことで、潜在意識(普段は無意識に隠している深層心理)が出たのでしょう。車内というプライベートな空間にいることで「公的領域の力」が機能しなくなり、彼の抱えていた「不全感」(自分自身の活動や機能、または容姿などについて完全でない、優れていないと思ってしまう感情)が全面に現れたということです。こうした私的な環境、あなたという恋人との距離が近くなるにつれ、車内空間は公私があいまいになり、潜在意識が表面化しやすくなります。もし、彼の車がスポーツカーや少し大きめの車なら「ユニフォーム効果」(ドレス効果とも)もあるのでしょう。警察官や消防士が現場で勇敢な行動が取れるのも、日々の絶え間ない訓練に加えて、制服を着ていることによる効果もあるというのと同様です。日ごろから何かを我慢している、勝ち負けにこだわる性格、あなたに格好いいところを見せたいなど、複雑な心理が働いていることもあるかもしれません。少し深く掘り下げると子どものころに虐待や暴力を受けたトラウマを持っていることもあります。結婚をして結婚生活に慣れてくると、運転以外の場面でもそういったことがあるかもしれません。可能性ということですが、DVや虐待ですね。平穏な家庭生活を望むなら、こういったタイプの男性はリスクを伴います。それでもこの人を失いたくないと思うなら、「運転の時、別人格になるのは嫌」と彼に真っ直ぐ伝えてください。何度伝えても態度が改まらないようなら、別れる決断も必要です。