Q.
彼との夕飯はいつも居酒屋、ランチはマック…。誕生日に誘ってくれた京都は行きも帰りも夜行バス。2泊は車中、京都での2泊は繁華街のビジネスホテルでした。ホテルでプロポーズされました。「貧しいから あなたに差し上げられるものと言ったら 爽やかな5月の風と せいいっぱい愛する心だけです。でも、結婚してくれますね」って。昔TBSのドラマ「天国の父ちゃんこんにちは」の中で森光子さんが語った詩とか。彼はお母さんから聞いたらしいです。私は返事が出来ず、旅行の最後は気まずい雰囲気に…。「愛する心だけ」じゃ困るし、「5月の風」って言われても私の誕生日は10月だし…。彼の優しさは何となく伝わってきましたけど、やっぱりお金も必要です。
A.
あなたの誕生日への贈り物は京都旅行。2泊は夜行バス。あとの2泊はビジネスホテル。その一室でプロポーズに利用した言葉がこの詩。1966年12月から78年9月まで東芝日曜劇場で不定期で21回にわたって放送された「天国の父ちゃんこんにちは」で、主演の森光子さんが毎回必ず語った詩です。夫の長患いからやむなく肌着の行商をすることになった女性が自らを「パンツ屋」と呼んで語るエッセイ(日比野都・作)をドラマ化したものでした。あなたの彼はお金のない自分を「天国の父ちゃん」と重ね合わせ、ドラマを観ていた人たちが感動したように、あなたもこの詩に感動してプロポーズを受けてくれると思ったのでしょう。ドラマが放送されていたのは、高度成長期のまっただ中で、日本も豊かさを感じられる時代になってきていましたが、このドラマの視聴者層の多くは戦後の貧しい時代を生き抜いてきた人たちで、自分の体験とも重ね合わせ、貧しい中での相手への思いやり、愛情というものに感動したものでした。ただそれは貧しい時代を生きてきた経験があるからこそであり、豊かな時代を生きているあなたが「貧しさは嫌」と思うのも当然です。「ふがいない自分を正当化するためにキザな台詞でプロポーズした」とあなたは受け止めたのではないですか?この言葉の先には、現状に甘んじて努力もせず、夢も持たない彼の姿しか想像できません。あなたの中では、既に彼との関係の終わりが見えていますよね。
さて、「愛する心だけじゃ困る」「彼の優しさは何となく伝わってきた」「やっぱりお金も必要」と言うあなた。本当に彼には「愛する心」「優しさ」があるのでしょうか?そしてあなたにも「愛する心」「優しさ」があるのでしょうか?2人にとってまず大切なものは何ですか?「愛する心」「優しさ」?それとも「お金」?プロポーズする、されるという関係やそれに続く結婚生活の中で1番大切なことは何でしょう?私はあなたに贈り物をします。オー・ヘンリー作「賢者の贈り物」という小説です。貧しくて相手へのクリスマスプレゼントを用意できない若い夫婦が、それぞれ最も大切にしている「長い髪」「金時計」を売って時計の鎖とべっ甲の櫛をプレゼントするという話です。「二人は愚かなことに、家の最もすばらしい宝物を互いのために台無しにしてしまったのです。しかしながら〜中略〜贈り物をするすべての人の中で、この二人が最も賢明だったのです」。