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男と女のQ&A 恋愛編・夫婦編

2023年09月20日 case113【夫婦編】「夫の助けになりたい」

Q.
結婚して10年、8歳の息子と5歳の娘がいます。夫は優しい人で、家事にも育児にも積極的で、私が頼まなくても自分から何でもやってくれる人だったんです。ところが今年の春、課長に昇進してしばらくすると、まるで別人のようになってしまいました。私を威嚇するように怒鳴ったり、殴ったりすることもあるんです。「これがDV?」って思ったりもするんですけど、夫の様子から会社で自分の思うようにならないことがあった時にそうなるんだっていうことは分かるので、俗に言う「DV」とは違いますよね?
夫のことは愛しているし、普段はいい夫、いい父親なので、なんとか夫の助けになりたいと思うんですけど、どうすればいいのか分かりません。

A.
「いい夫、いい父親」が「昇進に伴うストレスで一時的に暴力的になっているのはDVではない」と思い、その確認のためのご相談です。残念ですが、これは「DV」です。「DV」、ドメスティックバイオレンスとは、「配偶者や恋人など親密な関係にある、またはあった者から振るわれる暴力」という意味に使われています。配偶者からの暴力を防止し、被害者の保護を図ることを目的とし、「配偶者からの暴力の防止および被害者の保護等に関する法律」(令和5年5月公布、改正法は令和6年4月施行)が制定され、「DV防止法」と呼ばれています。「DV防止法」では、被害者を女性に限定していませんが、配偶者からの暴力の被害者は多くの場合女性です。「夫が妻に暴力を振るうのはある程度仕方がない」という男尊女卑の社会通念の残存が背景にあると言われています。一口に暴力といってもいろいろな形態があり、あなたのように夫の言動をDVと認識していないこともあります。「助けになりたい」とおっしゃっていますが、DVは一度起きてしまうとなかなかその状況から抜け出すことができません。あなたの夫は暴力や暴言の後、急に優しくなって「ごめん」と言ったりしませんか?これを「ハネムーン期」と言い、「暴力期」と「ハネムーン期」を繰り返すことで、夫に対する気持ちが揺れ、強く拒否できずにいるうち感覚が麻痺して、DVのある日常が当たり前になってしまうこともあります。
別居や離婚を視野に入れることをお勧めしますが、「以前のような仲のよい生活を送りたい」と思うのなら、まずあなたが夫の言動はDVであるということを認識し、それを夫に分からせることが必要です。あなたの人権を無視し、心身を著しく侵害する重大な問題なのです。お子さんの前で暴力が行われることを面前DVと呼び、お子さんに対する虐待でもあります。社会通念や男女の経済的格差など、個人として片付けられない構造的問題も関係しているので、様々な機関が相談窓口を設けています。夫の行動を当たり前のことと思わず、少しでも早く頼れる機関に相談し、適切な対応をしてください。あなた1人で夫に「DV」を認識させることは困難なので、第三者の力を借りましょう。難しいことではありますが、夫が自身の言動を「DV」と認識できれば、カウンセリングも有効な手段です。夫婦で、時には別々でカウンセリングを受け、考え方、生き方のくせを変える努力をしてください。

取材協力 臨床発達心理士 大関洋子先生

臨床発達心理士 大関洋子先生

浦和カウンセリング研究所所長
プロフェッショナル心理カウンセラー
上級教育カウンセラー
1941年生まれ。埼玉大卒業後、高校で国語・音楽を教える。
結婚、出産、男女の共生等の話題で新聞・TV・雑誌等にも登場。
著書「この子たちを受けとめるのはだれ?」好評発売中!