Q.
結婚して20年、周りからは「仲いいわね」とか「ご主人、優しいわね」とか言われますけど、外面がよくて周りにはそう映っているだけなんです。私が我慢してニコニコしているんですよ。
ここ2年間は帰省しなかったのでストレスにはならなかったんですけど、18年間、どんなに私がストレスを感じてきたか…。お正月に夫の実家に帰省するのは当たり前なのに、私の実家に帰省するにはすごく気を遣います。「たまにはおまえの実家にも顔出さないとな」とは言うくせに、いざ行こうとすると「元気なの分かってるんだからいいだろ?」と強い調子で拒否されます。難しいところのある両親なので夫が行きたがらないのも分かるんですけど、私だって夫の実家になんて行きたくないんです。
A.
う〜ん、結婚して20年、あなたは「我慢してニコニコしてきた」んですね。それは立派でしたね。自分の本心を押し隠して20年という長い年月を暮らしてこられたとはびっくりです。人生100年時代とはいえ、そろそろ後半にかかった今、もう本音で生きてもいいですよね。
心理学者エリック・バーン(1910〜1970)は「人の内面には誰にでも3人の私が住んでいる」と言っています。1つは親的な考え方や行動をする私、2つ目は子ども的な私、3つ目は大人としての私です。親的な私は父親的な私と母親的な私、子ども的な私は自由で伸び伸びした私とおどおどして人に合わせる私に分けているので、細かく言うと内面の自我状態は5つの私からできていて、時と場合によってどの自分が相手のどの部分と交流するかで人間関係ができるというわけです。
人と人が関わり合うときの人から人への働きかけの1つ1つをストロークと呼んでいます。ストロークは人が持つ基本的な欲求である「愛への欲求」と「承認への欲求」とを求めます。人は食物や水がなければ生きていけないように、この基本的なストローク無しには生きていけないのです。あなたは、20年もの長い間、おどおどした子どもが大人の顔色を見て人に合わせるように生きてきてしまったようですね。内面の自由で伸び伸びした私や大人としての私を夫に対して出すように心がけてください。自由な子どもの私なら「私も実家へ行きたい」とはっきり言う、大人としての私なら「なぜ私の実家へは行かないの?」と聞く…。人間関係がうまくいかないときは、ストロークが必要な時に必要なストロークが出せていない時です。基本的な「愛の欲求」と「承認の欲求」が満たされないと、人は意識、無意識に「何もないよりはまし」と考えネガティブなストロークを求めてしまいます。「夫の実家になんて行きたくない」というのは、小さな子どもたちが承認してもらいたいためにいたずらをして周囲の注意を引くためのようなネガティブなストロークです。夫の両親へのストロークも思い切って素直に率直に自分の18年間の思いを話してみる。そして夫の母と仲良くなって、あなたからは夫、姑からは息子の困っている面を「そうそう、あの子そういう面はあるわよね。困ったものだね」と嫁姑の間で共有できるようになれば、きっと今後のあなたの人間関係はよくなっていくはずです。
(case97・103参照)