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男と女のQ&A 恋愛編・夫婦編

2021年02月19日 case82【夫婦編】「家計収入が激減」

Q.
コロナ禍で夫の残業がなくなり、私のパートも減らされて、収入が激減しました。
中学生2人は当分塾通いはやめられないし、授業料無償化制度はあるけれど、高校と中学ではかかる費用はまるで違います。
食費も増えるばかりなんです。
「なんでこのタイミングでコロナなの?」とコロナを恨んでみてもどうなるものでもなく、気持ちは沈むばかり。
夫は収入が減ったストレスなのか、飲みに行けないストレスなのか、最近頻繁に怒鳴ったり暴れたりするんです。
こんな時こそ夫婦で乗り越えなきゃだめなのに…。
私だって、怒鳴ったり暴れたりしたいですけど、そんなことしたら絶対夫に殴られます。

A.
1月22日朝日新聞朝刊に「自殺者11年ぶり増」という見出しで
「夫から暴力を振るわれている。抵抗しても何も変わらず、もう死ぬしかない」という相談が増え、
昨年3月に3千件だった相談件数が、9月には1万5千件を超えてピークになり、
その7割は女性だった
とのライフリンク(自殺対策に取り組むNPO法人)の統計が出ています。
実際の自殺者数は2万919人(2020年 厚労省)で女性が6976人で、前年より885人増加。
若い世代の増加も目立ち、小中高生は440人と過去最多だった1986年を上回ったと報じています。
「厚労省も新型コロナウイルスによる生活の変化などが背景にある可能性があるとみている」とも書かれています。

新型コロナウイルス第3波による自粛要請により、感染拡大の勢いは落ち着いて来たようには見えますが、
まだまだ予断は許されず、リモートワークの推奨、居酒屋など飲食店への時短要請が続いています。
当然、あなたの夫のように、残業もなくなり収入も激減、居酒屋で憂さを晴らそうにも時短で午後8時には閉店。
この状況下であたれる相手は、社会通念上許される(?)と思われている女性と子どもという図式ができ上がってしまっているのです。
中学生2人を抱え、塾の月謝や食べ盛りのお子さんの増える食費、パートも減らされご自身も収入減。
「私だって怒鳴ったり暴れたりしたいのに」「そんなことしたら絶対夫に殴られる」ので必死に耐えて我慢している。
とてもお辛いことと思います。
「男は憂さを女、子どもにあたって晴らしてもいい」という概念は、
未だにジェンダーギャップ(男女の違いにより生じる格差)が世界144カ国中114位という低さ
東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の森会長が「女性は競争意識が強く誰かが発言すると自分もと発言し、女性がたくさんいる会議はなかなか終わらないで困ると言っている人がいる」と発言し、20人の男性理事と5人の女性理事(その中の一人は「それは私だ」と思ったそうですが)皆で笑い声をあげたという国だから許されているのでしょう。

決して許されてはいけない状況があなたのご家庭で起こっています。
さしあたって、夫が怒鳴ったり、ものにあたったりした日時と様子をメモしておいてください。
そしてそれがあまり溜まらないうちに、夫が落ち着いている時を見計らって「こんな時だから夫婦で乗り越えよう」と話してください。

取材協力 臨床発達心理士 大関洋子先生

臨床発達心理士 大関洋子先生

浦和カウンセリング研究所所長
プロフェッショナル心理カウンセラー
上級教育カウンセラー
1941年生まれ。埼玉大卒業後、高校で国語・音楽を教える。
結婚、出産、男女の共生等の話題で新聞・TV・雑誌等にも登場。
著書「この子たちを受けとめるのはだれ?」好評発売中!