Q. 友達から電話がありました。「レストランで旦那見かけたよ。一緒にいた女の人の服装派手だし、相手のお皿に手を伸ばして食べてるし、外に出たら手をつないでるし…」。手をつないだ写メもきました。夫でした。相手は若い女性です。夫に「女の人と食事してた?」と聞くと「うん、仕事」と言うんです。平然と認める態度に腹が立って、画像を見せると、言い逃れできないと思ったのか不倫をあっさり認めたんです。謝まられましたけど許せません。離婚も考えなきゃと思っています。友達に話したら「不倫はしたやつが悪いよ。でもしたやつだけの問題じゃなくて夫婦の問題だよ。不倫しなきゃならないところまで追い込まれちゃったわけでしょ」と言われました。不倫された私の問題なんでしょうか。
A. あなたの夫は、今回のことを悪いことと思っていないのかもしれませんね。あなたが腹を立てるのも当然です。
進化という視点から考えると動物個体が生きている究極の目的は自分の遺伝子を次世代に残すことです。メス、いや私たち女性はどんなに多くのオス、男性と交配してもで きる子の数は月1回の排卵の数より多くなることはなく、哺乳類は妊娠期間中、授乳中も子は作れませんが、オスは多くのメスと交配すればするほど多くの子を作り、自分の遺伝子を残すことができます。TVドラマ「不機嫌のジーン」(竹内結子主演、彼女の元恋人で動物行動学専門の大学教授が内野聖陽(敬称略))で、内野聖陽が何かにつけて「男の遺伝子は浮気するようにできているんだ」と豪語していました。これは自己正当化もいいところで、とても危険なメッセージをドラマを通して伝えています。単に「進化」という点から考えると浮気もあり得るということであって、倫理的な善悪とは別な話です。進化生物学や動物行動学と呼ばれる研究分野は人を含む色々な動物の行動に説明を与えます。しかし、説明を与えるだけで善悪の判断を下しているわけではないのです。(麻生一枝著「科学でわかる男と女の心と脳」サイエンス・アイ新書参考)
あなたの友達が「不倫したやつは悪いが夫婦の問題。不倫しなきゃならないところまで追い込んだ」と言ったとのこと。確かに夫婦関係がうまくいっている場合には「不倫」はしないわけですから、的外れということではありません。ただ、最近、カウンセリングを受けに来られるご夫婦の不倫の原因がなんとも不可解、不可思議。「えっ?そんなことが不満で不倫?」と思うご夫婦が増えているのです。例えば「妻が妊娠してかまってくれなかった」「子どもが生まれて妻が子どもを優先するようになった」「浮気相手の女性は幼い頃、父親を亡くしてかわいそうだった」「妻が私をリスペクトしてくれない」等々。何とも情けない理由です。1983年アメリカの心理学者ダン・カイリーはこれを「ピーターパン症候群」「成長することを拒む男性」と言っています。ティンカーベルのような妖精をあなたに求めているのかもしれません。逆に妻が不倫をする場合は夫や子どもに縛られ自分を見失い「自分らしく生きたい」というケースがほとんどです。離婚も1つの 選択肢ではありますが、 夫婦の問題として捉え、落ち着いて話し合うことも必要かもしれません。
リニューアル新連載
【男と女のQ&A】~夫婦編~case 72
2020年02月27日 不倫された私の問題?
取材協力 臨床発達心理士 大関洋子先生
浦和カウンセリング研究所所長
プロフェッショナル心理カウンセラー
上級教育カウンセラー
1941年生まれ。埼玉大卒業後、高校で国語・音楽を教える。
結婚、出産、男女の共生等の話題で新聞・TV・雑誌等にも登場。
著書「この子たちを受けとめるのはだれ?」好評発売中!