Q. 半年前に男の子を出産しました。私が育休を取り、保育園に入園する4月まで子育てに専念しています。子どもが産まれるまでは、「僕が中心に子育てするよ」なんて言ってたのに、いざ子どもが産まれると全然違うんです。母乳が出るのは私なので、私じゃなくちゃできないことも多いですけど、食事の支度とか、洗濯とか、掃除とかしてくれたっていいじゃないですか。「僕も育休取るよ」なんて言ってたくせに、休んでくれたのは有給休暇5日間だけ。子どもが産まれる前と全然変わりません。子どもが泣いた時に、あやしてくれたり抱っこしてくれたりはするんですけど、かまい過ぎるから、その後かえって私が大変なことになっちゃいます。夫の育児は結局自分の遊びなんです。
A. 我が家の立ち会い出産、子育てがマスコミに大きく取り上げられて30年になります。それまで困難だった立ち会い出産が今では一般的になりました。男性の育児も奇異の目で見られることもなくなり、当時(私の)夫がマスコミを通して強く訴えていた男性用トイレのベビーチェア設置もほぼ実現し、おむつ替え用ベッドの設置も進んでいます。主夫という言葉も定着、男性用育児用品も増えました。35年ほど前、夫が私の勤務先に出す非課税証明を市役所に取りにいったところ、窓口の男性に「あなた男でしょ?!どこか身体でも悪いんですか?」と言われ、「主夫ですから」と言ってもなかなか出してもらえず30分も言い争いをしていると、隣の窓口の女性職員が奥で上司と相談してやっと出してもらえたということもありました。
02年の父親の育休取得率は0・33%で、政府は03年に「次世代育成支援対策推進法」を施行しました。その第5条には「労働者の職業生活と家庭生活の両立に必要な雇用環境の整備」が上げられ、「事業主の責務」が明記されています。「出産後8週間(現在は最長2歳)までは父親も育児休業が取れます。誰でも取れるお休みです」ということですが、法律があることさえほとんど知られていません。女性に子どもを産ませるために作った法律という感じもしますが、本来子どもを中心に据えた福祉政策としての法律と位置づけられるべきです。
育児には両親が責任を負うという当然のことが、会社中心に動いている社会に侵されている観があります。イラクで命を落とされた外交官の井ノ上正盛氏が第1子の誕生時に帰国できなかった思いを「自分の子供が生まれる時にそれより大事な仕事があるとは思えないのです」(「図解雑学 ジェンダー」海老原暁子著ナツメ社)と書いておられました。
子育ては女だけの仕事ではないという感覚はだいぶ広がりましたが、父親の育休取得率は5%(2017年厚労省)と低迷、小泉大臣が2週間の育休を取ることが大きなニュースになっています。父親が育児休業が取れない最大の理由は人手不足等で取りづらいが72%。取得率を上げるには事業主が強く勧めることも必要でしょう。あなたの場合、「子育てに理解のない夫」ではないので、育休を取りづらい夫の立場も理解した上であなたの気持ちを丁寧に伝え、一緒に子育てをしたいと思えるような夫婦関係を築きましょう。それができれば、自分の遊びの育児にはならないはずです。
リニューアル新連載
【男と女のQ&A】~夫婦編~case 71
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2020年02月01日 夫の育児は自分の遊び
取材協力 臨床発達心理士 大関洋子先生
浦和カウンセリング研究所所長
プロフェッショナル心理カウンセラー
上級教育カウンセラー
1941年生まれ。埼玉大卒業後、高校で国語・音楽を教える。
結婚、出産、男女の共生等の話題で新聞・TV・雑誌等にも登場。
著書「この子たちを受けとめるのはだれ?」好評発売中!