Q. 結婚して22年、大学生と高校生の息子がいます。下の子が小学校に上がるくらいまでは、夫と必死に子育てをして、「愛している」「一緒にいたい」「家族っていいもの」、そんな感情を持っていました。でも、特別なきっかけもなく、気づいたら夫の存在が私の中から消えていたんです。夫は私の中から存在が消えていることに気づかないようでしたが、しばらくすると気づいたらしく、態度がぎこちなくなりました。夫は2人きりの時はまるで赤の他人ですが子どもや親戚、他人の前ではいい夫婦を演じてくれています。ところが最近浮気をしているみたいなんです。それでも私は腹も立てず、夫と同じようにいい夫婦を演じています。なぜ夫も私もいい夫婦を演じているのか疑問に思えてきました。
A. 2015年、木村拓哉さん、上戸彩さんが夫婦役を演じた「アイムホーム」が、まさにこれ。表面は仲の良い夫婦を周りに見せているのに、内面はもうお互いすれ違ってしまっているというドラマでした。事実かどうかはわかりませんが、実際の夫婦である木村拓哉さんと工藤静香さんも仮面夫婦と噂されることもありますね。「仮面夫婦」とは、対外的に夫婦として振る舞っていても実際には二人の間に親密なやり取りがなく、いわば夫婦という仮面を被ったような夫婦のことです。
今は仮面夫婦となってしまった夫婦でも、最初からそうだったのではなく、心のすれ違いが生まれるキッカケがあったはずで、それは結婚して一緒に生活してみたら①価値観がずれていた、②生活スタイルの違いがうまくすり合わせられなかった、③セックスレス、④それらが重なって相手が浮気をした、⑤気づいたら会話が必要最低限の事務的内容のみになっていた…。仮面夫婦も子どものいる場合といない場合とでは違いがあります。子どもがいると、「子は鎹(カスガイ)」の諺の様に、「子どもが大きくなるまでは」と双方我慢するわけですが、子どもがいないと、離婚の手続きが多少面倒だとしても、経済面、社会的対面さえクリアできれば、仮面夫婦を続ける必要もなく離婚は比較的容易です。平成28年厚生労働省の「人口動態統計の年間推計」では、その年の婚姻件数62万1千件に対して離婚件数が21万7千件となっていて離婚率は35%、3組に1組が離婚していることになります。あなたのように内実はすでに破綻しているのに離婚していない夫婦を含めると半数以上6割近くの夫婦が仮面夫婦ではないかと思われます。
あなたはお互い、いつの間にか無関心になっていて、今回の相談になったわけですから、ここが踏ん張りどころ。結婚当所はお互い相手のために考えていたのが、いつ頃からか相手に幸せにして貰おうと思いはじめ、「優しくしてほしい」「理解してほしい」から始まって、「〜して欲しい」と相手に過度な要求をし、それが期待はずれに終わると、無関心になってしまったのでしょう。
相手にしてもらいたいことを相手にしてあげる、例えば、優しく言葉をかけるとか、相手の非言語の行動や表情から心の本音を読んで理解してあげるとか、まず自分から変える努力をもう一度してみてはいかがでしょう。
リニューアル新連載
【男と女のQ&A】~夫婦編~case 68
2019年11月01日 いい夫婦を演じている
取材協力 臨床発達心理士 大関洋子先生
浦和カウンセリング研究所所長
プロフェッショナル心理カウンセラー
上級教育カウンセラー
1941年生まれ。埼玉大卒業後、高校で国語・音楽を教える。
結婚、出産、男女の共生等の話題で新聞・TV・雑誌等にも登場。
著書「この子たちを受けとめるのはだれ?」好評発売中!