Q. 彼とは結婚相談所で知り合いました。彼の前に「高学歴・高身長・高収入」の〝三高男子〞とお付き合いしたんですけどしっくりこなくて、基準を「家族に優しい・私だけに優しい・家計に優しい」の〝三優男子〞に変えて、彼と出会ったんです。彼は一人暮らしをしていたので家事は完璧、いつも私だけを見てくれている、チャラいところがなく無駄遣いはしないという典型的な三優男子。彼にプロポーズされた時はすごく嬉しかったんです。でも「ご家族紹介してよ」と言ったら突然不機嫌になり「必要ない」って言うんです。「そうはいかないでしょ!?」と言っても「結婚後も付き合うことのない人たちだから」と。私は彼が好きだけど、だからなおさら彼の家族とも仲良くしたいんです。
A. 要するに、あなたの結婚観は「自分にとって何が得か」に終始しているということですね。「三高」にしても「三優」にしても、自分の損得でしかありません。「結婚」ってそんなもんなんですか!?
私は違うと思いますよ。そんなあなたがなぜ彼の家族と仲良くしたいんですか? 彼は自分の家族とは、うまくいっていないのでしょう。だから、あなたの希望している「私だけに優しい」は100%OKというわけです。そして、あなたの言う「家族に優しい」は、きっと、あなたと作る新しい家族には優しいでしょうね。自分の家族とうまくいっていたら「私だけに優しい」はないでしょう。あなたの言っていることは矛盾しています。あなたにだけ優しいということは、自分の家族や友だちともうまくいってないのかもしれません。
人間の本質の一つに「人は人と人との関わり合いの中で生きている」ということがあります。人間は他の高等哺乳類の赤ちゃんに比べ未熟で生まれます。これは人間が直立二足歩行をするようになって骨盤が円錐の形になって体内の臓器を支えたため、骨盤の一番下にある産道が他の動物に比べて非常に狭くなったためです。人間以外の多くの高等哺乳類の赤ちゃんは生まれてすぐに立ったり這ったり自力で動き廻ったり、親と同じような風貌で生まれますが、人間の赤ちゃんは、充分に成熟するまで子宮の中にいると狭い産道を通ることができないので、他の動物より未熟で生まれるのです。
人間は未熟で弱く生まれるため人間としての特質が固まっていません。そのため、かえって、何にでもなれる可能性を持っています。現在の文明の発達も、子が親と違う選択をし、創出することができる生物だったからこそと言えるでしょう。未熟で弱く生まれる私たちが生き抜くためには、どれだけ多くの人たちの助けを借りなければならないか、考えてみてください。かつての日本の風習には5カ月目の戌の日に腹帯を巻いてくれる「仮親」、生まれると「名付け親」などたくさんの人との関わりの中で育ってきた歴史があります。
どうか「私にだけ」と言いながら「彼の家族とも仲良くしたい」と思っている矛盾を基本にして、結婚を損得だけで考えないでください。
リニューアル新連載
【男と女のQ&A】~恋愛編~case 65
2019年08月01日 「高学歴・高身長・高収入」の〝三高男子〞
取材協力 臨床発達心理士 大関洋子先生
浦和カウンセリング研究所所長
プロフェッショナル心理カウンセラー
上級教育カウンセラー
1941年生まれ。埼玉大卒業後、高校で国語・音楽を教える。
結婚、出産、男女の共生等の話題で新聞・TV・雑誌等にも登場。
著書「この子たちを受けとめるのはだれ?」好評発売中!