Q. 結婚して3年、現在妊娠8ヶ月です。結婚前、結婚後の家族像について、「子どもは最低2人、立ち会い出産、家事育児は2人で分担」って話し合ったんです。私はもちろん、当たり前のことを話し合っただけだと思っていたので、特に強い調子で話したりはしなかったんですけど、予定日を間近にして夫が出産に立ち会わないと言い出したんです。冗談かと思いました。だって「普通分娩なら、今どき立ち会わない出産なんてあり得ないよね」と話して病院を決めたんです。なのに今さら立ち会わないなんて…。普通分娩じゃなくなったら仕方ないですけど、出産は絆を深めるいいチャンスと思っていたのでショックです。家族が増える最初の段階でこれでは、将来のことなんて考えられなくなりました。
A. タツノオトシゴの夫婦の愛の秘訣は、人間の夫婦にとっても参考になるかもしれません。夫婦愛を深めるために、タツノオトシゴのオスとメスは、毎朝一緒に何度もダンスをします。(アマンダ・ビンセント氏 カナダブリティッシュコロンビア大学海洋生物学者・タツノオトシゴ保護グループ)タツノオトシゴの夫婦は踊りながら色を変え、時に尾を絡ませます。このダンスによってお互いの生殖能力を判断し、メスは産卵管を使って、オスの育児嚢の中に卵を産み付け、オスが成長した稚魚を出産します。その頃メスは、次の卵を準備しているそうです。
「オスが子どもを産み育てるという繁殖戦略」を取る神秘的な生き物は、海洋汚染や乱獲で生息数が減少しています。タツノオトシゴの他にも、献身的にメスの出産を助ける生物はいるそうですが、出産はまさに「種の保存」に関わる大切な繁殖戦略の山場です。
そんな中で人の出産が他の動物と大きく異なるのは、二足直立歩行になった長い歴史の中で「骨盤」によって子宮の胎児がしっかり守られているように造られてきたため、出産が他の生物よりずっとハードな出来事になったということです。他の生物は、赤ちゃんはほぼ親と相似形まで成長して生まれますが、人はこの骨盤や産道を通りやすくするため、人としては「未熟」で生まれてきます。このような出産の場は、母となる女性にとっても、父となる男性にとっても大変困難な場でもあり、生命誕生の感動の瞬間でもあります。その困難を2人で乗り越え感動を2人で共有する、とても貴重な体験です。
私が最初に出産をした50年前には、立ち会い出産の出来る病院はほとんどなく、1人で苦しみに耐えなくてはなりませんでした。そのため、3人目は自宅で助産婦(師)さんの介助で出産しました。その後、ラマーズ法の先駆者である(故)三森孔子先生と出会い、夫のみならず子どもたちも立ち会った出産を経験しました。その時撮影したビデオが映画化され、新聞、テレビ、ラジオ、週刊誌等、多くのメディアに取り上げられたので、ご記憶の方もあるかと思います。もちろん出産には様々な形があり、どんなお産であっても、夫婦にとっていいお産になり得ることは間違いありません。あなたたち夫婦にとっていいお産とは何なのか、話し合いを経て結婚したことを思いだし、しっかり時間を取ってもう一度話し合ってください。
リニューアル新連載
【男と女のQ&A】~夫婦編~case 64
2019年07月01日 まさかの立ち会い拒否
取材協力 臨床発達心理士 大関洋子先生
浦和カウンセリング研究所所長
プロフェッショナル心理カウンセラー
上級教育カウンセラー
1941年生まれ。埼玉大卒業後、高校で国語・音楽を教える。
結婚、出産、男女の共生等の話題で新聞・TV・雑誌等にも登場。
著書「この子たちを受けとめるのはだれ?」好評発売中!