Q. 先日夫の夏物のスーツをクリーニングに出しました。ポケットの中のものはすべて出したつもりでしたが、スーツを取りに行くとポケットの中にあったものをビニールの小袋に入れて分けてありました。見るとレストランのレシートと有料道路の通行券。私がクリーニングに出すことは夫も承知していたはずですが、レシートは有名レストランのもので、人数は2名になっていて、通行券はそこへ行くまでの観光道路のものでした。日にちを確かめると仕事に出ていたはずの日なので、私に話せないような相手と食事に行ったんだと思います。問い詰めたい気持ちもあるんですが、問い詰めれば嘘をつきますよね。隠しているのと、嘘をつかせてしまうのと、どっちがいいか…。とても迷っています。
A. 「進化」という見方から考えると動物が生きている究極の目的は生き残って子を作り、自分の遺伝子を次世代に残すことです。メスの作る卵子は栄養を豊富に含んで大きく、作るのにエネルギーを必要とするので、たくさんの卵子を作ることが出来ず、メスが多くのオスと性行為をしても自分の作る卵子の数を超えて子を作ることは出来ません。オスの作る精子は小さくて作るのにエネルギーを必要としないので、オスは多くのメスの卵を受精させられるだけの精子を作ることが出来ます。なので、オスは自分の遺伝子を持った多くの子どもを作ることが出来ます。1994年発行のギネスブックによると、ヒトの男性の子の数のギネス記録は、17〜18世紀のモロッコ王ムーレイ・イスマルの「少なくとも1042人」だそうです。「少なくとも」というのは、あまりに多いので途中で数えるのを止めたからとか…。さて、あなたの夫は動物の「進化」の本能にそそのかされるかのように、妻以外のメス、いえ女性とドライブをし、食事をし、妻がクリーニングに出すことを知っていたにもかかわらず証拠を残しています。あなたの夫は17世紀のモロッコの王でも、猿山に君臨するボス猿でもない、現代に生きるれっきとした「ヒト」の男性。しかも、あなたの夫という立場の男性です。進化の原理に基づいて行動する必要はないわけです。ヒト科ヒト属としての品位と、夫婦としての約束事を守ってもらいたいという視点から言えば、クリーニング屋さんが丁寧に小袋に入れて返してくれた証拠の品々を水戸黄門の印籠のごとく高く掲げ、「このレシートが目に入らぬか!」と詰め寄るもよし、詰め寄って嘘の見え透く言い訳を言わせるのが嫌なら、ご自分の胸に収めるもよし…。その判断は、これまでの普段の二人の関係性とあなたの性格から判断してください。例えば、すでにぎくしゃくしている部分があるのに離婚を考えていないなら、ご自分の胸に収めて黙っているのも一つでしょうし、これまで仲良く暮らしていたお二人で、あなたがこういうことを深刻に考えて胸に収めておいても、何かにつけ皮肉を言ったりいらいらしたりしてしまう性格なら、はっきり「こんなものがありましたが…」と言ってみるのもいいでしょう。そしてそれまでの夫婦のあり方を見直してみる機会にするのもいいかもしれません。現代では「男はそのくらい…」というような感覚はもう通用しないのですから。
リニューアル新連載
【男と女のQ&A】~夫婦編~case 44
2017年11月01日 夫の浮気の証拠?
取材協力 臨床発達心理士 大関洋子先生
浦和カウンセリング研究所所長
プロフェッショナル心理カウンセラー
上級教育カウンセラー
1941年生まれ。埼玉大卒業後、高校で国語・音楽を教える。
結婚、出産、男女の共生等の話題で新聞・TV・雑誌等にも登場。
著書「この子たちを受けとめるのはだれ?」好評発売中!