Q. 3ヶ月ほど前に彼氏と別れたんです。っていうか、私は別れたつもりなんですけど、日に何度もメールや電話が来ます。一切無視してますけど、面倒で…。妻子ある男性と恋愛している友人がいて、彼女が言うには、結婚前提の恋愛は別だけど、それ以外の恋愛は不倫に限るって言うんです。女性に対する扱いもうまいし、別れるのも簡単だし。彼女の言うのは正論ですよね。まだまだ、結婚する気もないし、私も妻子ある男性と恋愛して楽しもうかなって思うようになって、最近そういう相手と付き合うようになったんですけど、奥さんにバレたら慰謝料とか請求されちゃうんですかねえ…。ちょっと怖いです。
A. 幼い子どもの考え方には、自己中心的という特徴があります。何に対しても自分を中心に物事を考え、自分の視点からしか判断することができません。自己中心性とは、自分と他人との違いの意識が未分化なために、「相手の気持ちを考えること自体を考えない」で行動することです。この幼児期の特徴は、4〜5才児の段階で「自分以外の人の視点」を取得することによって解消されていきます。あなたも、あなたの友人も発達心理学的に考えると、まだこの年齢にあると言えます。
ピアジェという発達心理学者の「3つの山」の模型の実験があります。「高さ」「大きさ」「色」の違う3つの山の模型を置き、自分のいる位置からの見え方と他の位置からの見え方を描かせる実験です。4〜5才では位置に関係なく自分のいる位置からの見え方を描いてしまいますが、7〜9才になると自分のいる位置とは別の位置からの見え方も想像して描けるようになります。9〜10才以降になると遠くの物は小さく、近くの物は大きく見えるなど、3つの山の相互の関係を総合的にとらえられるようになり、見る位置によって見え方が違ってくることが理解でき、自己中心的な考え方から、客観的かつ総合的な考え方へと発達していきます。
当然、たまたま好きになった人に妻と子どもがいたというケースもあります。けれども、そんな時は好きになった人も、あなたも、その人の妻や子の立場に立って考えれば身を削るような苦しみの中で、この愛をあきらめるか、自分の一生をかけてこの人の妻や子に償い続けてでもこの愛を成就させるか思い悩むわけです。それなのに「楽しむ」ために、「面倒がないから」妻子ある男性と恋愛をするというのは、他者との関係性の価値判断のできない自己中心的な未発達な状態と言えるでしょう。確かに結婚制度そのものにも問題があって、それぞれの立場を守るための制度に見えて束縛していたりもします。結婚制度や戸籍制度は、夫婦間の権利関係のためでなく、税の取り立てが目的のものだったからです。愛し合った2人のどちらかに家庭があり、それでもその人の妻と子どものことを思って家庭を壊さず2人の愛を誰にも知られず貫き通すか、その苦しさに耐え切れず愛をあきらめるか。どちらの苦しさもつらく、「楽しむには不倫」という考えが「正論」というのは間違いです。道徳的価値判断を2人で苦しみながら乗り越えるだけの本物の愛が必要でしょう。そして当然、相手の妻からの慰謝料請求は認められます。
リニューアル新連載
【男と女のQ&A】~恋愛編~case 33
2016年12月06日 恋愛は不倫に限る!?
取材協力 臨床発達心理士 大関洋子先生
浦和カウンセリング研究所所長
プロフェッショナル心理カウンセラー
上級教育カウンセラー
1941年生まれ。埼玉大卒業後、高校で国語・音楽を教える。
結婚、出産、男女の共生等の話題で新聞・TV・雑誌等にも登場。
著書「この子たちを受けとめるのはだれ?」好評発売中!