Q. 彼とは私の会社のパーティーで知り合いました。帰りしなに「良かったら連絡ください」と彼から携帯番号が入った名刺を渡されました。若いのに取引先の部長。明らかに高級そうなスーツで、立ち居振る舞いもきっちりしていて目を引く存在だったので、一度お会いするくらいはと後日思い切って連絡しました。それから1年半になります。食事はいつも高級店、買い物はブランド店。彼は優しいし、私も有頂天になっていました。でも1年半経っても彼と会う時の私の緊張は解けないし、自分らしく振る舞えないんです。子どものころから外食と言えば牛丼やラーメン、せいぜいファミレスだった私にとって、彼との生活では、自分らしく生きられない気がして「結婚は無理」と思うようになりました。
A. 昔から「釣り合わぬは不縁の基」と言われています。ご自分で「彼との生活では自分らしく生きられない気がして」「結婚は無理」と思うようになったとのこと。とても良い判断だと思います。でも少し残念な気もして、私にこの判断を後押ししてほしくて相談しているのですよね。
とにかく1年半も付き合っているのに緊張が解けず、彼の前では自分らしく振る舞えない。これは結婚が無理な決定打です。夫婦って、その人といると安心していられるとか、ホッとできるとか、空気みたいで、いないと生きられないけれど、いても全然邪魔じゃないとか…。だから山あり谷ありの長い人生を2人で手を携えて越えていけるんじゃないですか?
部長という肩書きや高級ブランドの買い物と食事。そんなものに引かれて付き合っていた1年半。無駄だったようですね。子どものころ、家族で食べた牛丼やラーメン、特別な日のファミレス…。楽しかったでしょ?美味しかったでしょ?彼と1年半食べ続けた高級レストランのフランス料理や会席料理の味気なさ。スープは音を立てずに飲む。ナイフとフォークは外側から使う!〜の使い方は…。もう味なんか分かりゃしません。大盛りや特盛りを平らげた牛丼、家族で汁まで残さず食べたラーメン屋さんのラーメンの美味しさ…。あなたはのびのびとした自分でいたはずです。いいんですよ、ちょっと背伸びして買ってもらったブランド品を身につけてお洒落なレストランで食事をしても。2人の人間性や価値観が根底のところで一致してさえいれば。きっと徐々に緊張が解け、そのうち彼をラーメン屋さんや牛丼屋さんに誘って、あなたも彼ものびのびと自分らしく振る舞い美味しい食事ができたはずです。
「マイフェアレディ」というオードリー・ヘップバーン主演の映画をご存じですか?花売り娘、イライザをヒンギス博士が貴婦人に仕立てるという映画です。この映画のラストは、博士の実験台にされたと気づいたイライザが腹を立てて家を飛び出しますが、彼女を真に愛していることに気づいた博士の下へ戻ってくるところで終わります。でもバーナード・ショー原作のラストは違うんです。彼女は没落して無一文になったフレディ(途中登場するプレイボーイ)と結婚し、下町で2人で花屋を始めます。あなたにアドバイスはいりませんね。自分の人生と自分らしさについてもう一度ご自身に投げかけてみてください。結論は出ているはずですよ。
リニューアル新連載
【男と女のQ&A】~恋愛編~case 25
2016年04月06日 彼の前では自分らしくない私…
取材協力 臨床発達心理士 大関洋子先生
浦和カウンセリング研究所所長
プロフェッショナル心理カウンセラー
上級教育カウンセラー
1941年生まれ。埼玉大卒業後、高校で国語・音楽を教える。
結婚、出産、男女の共生等の話題で新聞・TV・雑誌等にも登場。
著書「この子たちを受けとめるのはだれ?」好評発売中!