Q. 結婚して10年になります。先日、友人とホテルでランチをしました。家に戻ったのは午後7時半。夫よりちょっと後でした。私が玄関を入るなり、夫に「どこ行ってたの?」と聞かれました。「友達とランチ。久しぶりだったから、いろいろ話すことがあって…」と答えると「ふーん、長くなっちゃったんだぁ?そういう時って普通〝何時まで〞って決めとくよね?」「そうだけど、なかなかピタッと終わらないよね」「だからあらかじめ決めとくんじゃないの?」。以前にも夫より遅くなったことがあるんです。そのときも、ぐちぐち言われました。要するに「俺が帰ったときには家にいろっ!」って言いたいんですよね。なんでもこうなんです。どうして私がこんなに縛られなきゃならないんですか!
A. 結論から言えば、このままなら別れた方がいいかなぁ…。「なんでもこうなんです」ということですから、あなたの夫はあなたを自分の思い通りにしておきたいわけですよね。「俺が帰ったときには家にいろっ!」から始まって「子どもはうまく育てろ!」「俺の親にも孝行しろ!」「料理はうまく作れ!」「いつもきれいでいろ!」「俺より先に死ぬな!」と続けば、どこかで聞いたことのある台詞。そう、さだまさしさんの「関白宣言」そのものです。ただあの歌は、途中「できる範囲でかまわないから」と断っていたり、「俺が逝くときは涙のしずくを2つ以上こぼしてくれたら何もいらない」と言っていたり…。要するに、関白宣言をしてみたけれど、逆説的なジョークで終わっています。天皇の代わりに政治を行う公家の最高位の関白。「亭主関白」はそんな権力の象徴としてできた言葉だろうと思いますが、「関白宣言」は「こうあったらいいなあ」という男の願望と現実とのギャップをユーモラスに歌った歌ですね。
この歌が流行ったころは、男のふがいなさや尻に敷かれる夫などが話題になる時代でした。会社では上司に威張られ、家では妻に威張られる。そんな男性像を逆説的に歌ったことで、その滑稽さが受け入れられ流行ったのだろうと思います。「男が女を自分の召使いのように使える時代は終わった」、「女も人格を持った一人の立派な人間」という宣言にも聞こえます。この曲の最後は、子どもたちの楽しそうな笑い声で終わります。夫は妻を気遣い、妻はそれに応える。そんな夫婦の有り様の向こうに幸せがある…。
さて、あなたは10年間、自由のない奴隷のような身分に耐えてきた。その向こうに幸せはありますか?想像すらできないのでは?それを夫に伝えましょう。ただその前に、なぜあなたが10年間も耐えてきたかを考えてください。「ぐちぐち言う夫に恐怖を感じる」あるいは「夫が会社で働いている間、優雅に友達とホテルでランチしている自分が後ろめたい」「この男と別れても私程度の女にはこれ以上の男は現れない」「子どもたちがまだ小さい」…まだあなたの内側に女は男に従ってこそ幸せになれるとか、良妻賢母のような古い価値観があるのかもしれません。だとしたら、心の中を見つめましょう。今は家事も立派な労働と認められる時代。そんなことも考えて、夫に話してみてください。もし、聞く耳を持たない夫なら、そのときは「別れる」も選択肢ですね。
リニューアル新連載
【男と女のQ&A】~夫婦編~case 19
2015年10月04日 なんで夫に縛られなきゃならないの?
取材協力 臨床発達心理士 大関洋子先生
浦和カウンセリング研究所所長
プロフェッショナル心理カウンセラー
上級教育カウンセラー
1941年生まれ。埼玉大卒業後、高校で国語・音楽を教える。
結婚、出産、男女の共生等の話題で新聞・TV・雑誌等にも登場。
著書「この子たちを受けとめるのはだれ?」好評発売中!