Q. 結婚して10年、小学1年生の息子がいます。夫は、私にも優しく接してくれて、粗野なところもなく、がつがつした雰囲気もない、草食系男子の典型といった人。そんな夫に惹かれ結婚しました。ところが、息子が生まれたことで夫の性格が変わってしまったんです。生まれるまでは、男の子でも女の子でもいいって言っていたのに男の子が生まれたとたん「俺はこいつをサッカー選手にする!サッカー選手になるのは俺の夢だったんだ」とかなんとか言っちゃって、しょっちゅうサッカー観戦には連れて行くし、休みの日には何時間も2人でボールを蹴って遊んでいます。私は男の子だって優しく落ち着いた子に育てたいのに、息子がどんどん粗野になっていくので心配です。
A. 粗野でなくがつがつした雰囲気もない男性に惹かれて結婚したあなた。ああ、それなのに、それなのに…。息子さんの出生から突然、夫が豹変!あの優雅な言動の影もなく、突如として夫は私の知らない粗野な男性に変わってしまったと思って、あなたは一人6年もの長い間、悶々と悩んできた。辛かったことでしょう。もう限界、私ひとりでは抱えきれないこの気持ち!ということでのご相談ですね。このままでは夫も子どももどんどん私の「嫌い」な粗野な性格になっていってしまう。不安ですね。恐いですね。
でも大丈夫です。「俺はこいつをサッカー選手にする!サッカー選手になるのは俺の夢だったんだ!」と彼は言っています。そう、「夢」なのです。少年のほとんどが一度は持つ「夢」。でも夢は淡く消えていって、現実に彼は、彼の持ち味のひとつである優しく粗野でなく、がつがつしない性格であなたを妻とすることができて、今、サッカー選手ではない。粗野でなくがつがつしない性格がサッカー選手に向いていなかったのかもしれませんね。でも、勝つためにはがつがつする強さや、時にはゴールを決めるために相手を倒すくらいの厳しさにも彼は憧れていた。それが自分の遺伝子を半分持った息子と出会って再燃した。息子に自分の夢を演じてもらいたい、彼にとって優しさは時に弱さというコンプレックス。それを息子にリベンジしてもらいたい…。
一方あなたは、人の価値は粗野でないこと、優雅であることと考えている。粗野は見方によっては乱暴で下品なことに見えるけれど、見方を変えれば強くて素朴でへこたれない強さと見ることもできます。要するに夫婦それぞれの価値観を息子さんに押し付け合っている。夫にとって時には弱さの象徴をあなたは優しさと優雅さと受け取っていた。夫は息子にそのコンプレックスをリベンジしてもらいたいと思った。あなたは夫の持つ優しさや優雅さを息子にも持ってもらいたいと思っていた。どちらも自分の価値観をひとり息子に押し付けようとしていることでは同じ。あなたが惹かれた優しさと粗野でない性格は私も大好きですが夫という一人の人間の中にそういうもう一つの面があること、また、子どもがどう生きて何になりたいかは子ども自身の問題であること、子ども自身が自分で決められる年齢までどう育てたいかは、この際夫婦でしっかり話をし、理解し合ってお互いの価値観をすり合せてみてください。
リニューアル新連載
【男と女のQ&A】~夫婦編~case 16
2015年07月10日 サッカー選手になりたかったなんて…
取材協力 臨床発達心理士 大関洋子先生
浦和カウンセリング研究所所長
プロフェッショナル心理カウンセラー
上級教育カウンセラー
1941年生まれ。埼玉大卒業後、高校で国語・音楽を教える。
結婚、出産、男女の共生等の話題で新聞・TV・雑誌等にも登場。
著書「この子たちを受けとめるのはだれ?」好評発売中!