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男と女のQ&A 恋愛編・夫婦編

2014年10月09日 夢がなくなってしまった夫なんて…

Q. 夫とは大学のサークルで知り合いました。学生時代には人生についていろいろ語り合いました。その頃の夫には仕事のこと、家族のこと、自分の人生のこと、たくさん夢がありました。死ぬまで現役でいたいなんて、いつも熱く語っていました。私に言わせれば実現できないような夢もあって、ロマンばかり語る人だなあという印象でしたが、そんな夫に惹かれ、リスクはあってもついて行こうと結婚したつもりです。ところが結婚して20年。夫の口から出るのは「退職したらゆっくり温泉巡りでもするかぁ」といった老後の話ばかり。夢を語りながらの温泉巡りならいいけれど、夢を語らない夫とは温泉巡りなんてしたくありません。

 

A. あなたは「男はこうあるべき」と思っていませんか?「男は大きな夢を持ってこそ魅力的。実現出来ないような夢でもそれを熱っぽく語る男ってかっこいい!」という男性観です。男は「元気で活動的」「体力もあってたくさん食べる」「お酒が飲めて甘いものが苦手」「機械に強くて料理や子育ては下手」など。そして女は「しとやかでやさしい」「少食でスイーツ好き」「お酒はたしなむ程度がいい」「料理や子どもが好き」「理数系科目は苦手」「涙もろくて気配りができる」…なんてね。このように男や女を決まり切った型の中に縛ることで社会や国家は安定してきましたけれど、それって生きづらいですよね。

「男の子でしょ、泣くんじゃありません!!」と言って育てられた結果、男性の自殺率は女性の数倍、「男は強いのがいい」と言われるから、配偶者からの暴力を振るわれた経験を持つ女性はかなりの数に上ります。女はやさしくて、他人を世話するという社会的性役割を背負って、夫の両親や自分の親の介護をする割合は女性が7割以上。自分の心を押し込めて他者に気配りをして生きてきた結果、うつ病の9割は女性です。男は仕事、女は家庭、「仕事ができる女はかわいくない」など、古典的な男道女道があなたの心の底になかったでしょうか?

若かりし頃の夫が熱くロマンを語って魅力的だったのに、あれから20年、何が彼を「老後の話」ばかりしか語れない男にしてしまったのでしょうか?もしかしてプロポーズの言葉に「お前は俺だけの女になるんだ」なんていうフレーズがありませんでしたか?内容もひどいけれど「お前」という呼び方もひどい。このプロポーズを「うれしいわ」と受けてしまった時、現在の状況になることは必然だったのです。

彼は「強い男」「何があっても人を頼ったり泣き言を言わない男」として自分の素直な感情を吐露する場も人もなく、家族を守るため必死に20年戦って、現在〝アラフィフ〞。

「もういいかな自分。疲れた…」という思いにかられても仕方がない年齢。やっと男としてではない「人間」としての本音が出てきたと受け止めて、あんみつやパフェでも食べながら2人で紅葉を訪ねる温泉巡りの夢を語ってはいかがでしょう。

疲れた夫に代わってあなたが夢を持ってもいいのでは?その中で再び本物のロマンがよみがえるかもしれませんよ。

 

リニューアル新連載
【男と女のQ&A】~夫婦編~case07

取材協力 臨床発達心理士 大関洋子先生

臨床発達心理士 大関洋子先生

浦和カウンセリング研究所所長
プロフェッショナル心理カウンセラー
上級教育カウンセラー
1941年生まれ。埼玉大卒業後、高校で国語・音楽を教える。
結婚、出産、男女の共生等の話題で新聞・TV・雑誌等にも登場。
著書「この子たちを受けとめるのはだれ?」好評発売中!