人気連載

人気連載:シェフのイタリア料理旅 シェフの門平光正さんが、イタリアでの修行中に出会った本場の料理を紹介します

2023年04月24日 【vol.7】異文化の交流地シチリア西部の郷土料理

イタリアの最も南に位置するシチリア島。地中海交易の要衝であり、ギリシャ人、ローマ人、アラブ人など様々な民族にも支配されてきたことで異文化が融合し、独自の食文化が形成されてきました。

特に、島の西端にあるトラーパニはアラブの影響を受けていて、アラブ人の常食であるクスクスが名物料理の一つとなっています。クスクス発祥の地アフリカやアラブでは具材に鶏肉や羊肉を使うのに対し、「トラーパニ風クスクス」は、この土地で獲れた魚介を使うのが特徴です。パラパラした食感のクスクスに、トマトなどとともにじっくり煮込んだ魚介のスープをかけて食べるのですが、魚介の旨味が凝縮した深い味わいを楽しめます。

もう一つ、トラーパニには「ペストトラパネーゼ」という料理があります。これは、アーモンド・トマト・チーズ・バジル・ニンニクをペースト状にしたもので、「ブシャーテ」というくるくる巻きの手打ちパスタと合わせるのが定番です。日本ではあまり馴染みがない味ですが、アーモンドの風味とトマトの酸味が相まったペーストが、モチモチのブシャーテによく合って美味しいです。

シチリアには、まだ日本では知られていない料理がたくさんあります。ぜひ紹介していきたいですね。


▲魚介の滋味深い「トラーパニ風クスクス」

ナビゲーター 門平 光正

ナビゲーター:門平 光正

イタリアでは、ミシュランで1つ星を獲得した店の立ち上げスタッフとして、メイン料理を担当。帰国後は「アズーリ」などを経営する(株)ノースコーポレーショングループの店のシェフとして活躍中。